るとなのトーラム小説置き場

トーラムオンラインの二次創作に当たるかと

第一章 第一話 地下水路の暴走ーBAD ENDー

 まずい。これは、まずい。隙を突いて逃げなきゃ。

 

 薄暗いソフィア地下水路の一角にゲシュペンストがいた。ゲシュペンストは先に続く通路を塞いでいる幽霊だ。その日の機嫌次第で強さが大きく変わるが、普段なら一番機嫌が悪いときでも難なく勝てていた。だが今日は、機嫌が悪いでは済まされないほど何かに対して怒っているらしい。それを知らずに近づいてしまった私は、絶好の標的になってしまっている。逃げる機会をうかがっているうちにもう傷だらけだ。

 見たことないほど荒れ狂ったゲシュペンストが、地下水路の壁をも巻き込みながら私に向かって攻撃をしてくる。奴の鎌が当たり、天井からはパラパラと小石が降ってきた。どうにか回避。

 しかしその時に足を踏み外しそうになり、ひやりと嫌な汗が伝う。落ちればまず助からない高さだ。いくら魔導具のおかげで多少は飛べるにしても、落ちても大丈夫なんて思えるわけがない。

 時間稼ぎに一撃入れてやろう。体勢を立て直してアローの詠唱に入る。奴は接近してきて――通路の奥から白い光のようなものが飛んできた。

 

 あれは……シルバーロア? 何でこっちにまで……

シルバーロアはこちらに気がつくなり攻撃を仕掛けてきた。躱しようがなくて、両足にぶつけたような痛みが走り、足下が凍り付く。いつもなら向こうから攻撃してくるなんてまず無いのに。今日は何があったんだろうとか、今は考えてられない。とにかく私にはどうしようもない。

 

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 そのままの姿勢でアローを発射したとき、奴もまた狙い澄ましたように足めがけて鎌を振り下ろした。骨に響く感じがする。凍結も入っているし一気に機動力を奪われた……そうすると、次また避けられないなんてことに、なる。距離を取ろう。このまま逃げて「今は危ない」って誰かに伝えないと。

 ゲシュペンストが魔法を打ってきてかろうじて避けきるも、待ち構えていたシルバーロアの攻撃が当たった。

 

「っ……うぁ……」

 

 床にたたきつけられて息が詰まる。痛みで体がうまく動かない。でもこれ以上やられたら本当に逃げられなくなっちゃう。どうにか起き上がろうと力を入れるも叶わず。

 

 もう一度――不意に胸に冷たい感触がした。

 

 うん……? 待って、熱い。痺れるような……これはまさか刺さってる――鈍痛を感じ始め、その時には私の意識は限界を迎えていた。